自分とBUMP OF CHICKEN その5 初めてのバンプのライブ編

※このブログは、自分と、自分がこの世で一番好きなバンドであるBUMP OF CHICKENとの思い出を振り返る、言わば自分語り回顧録です。

 

高校受験前の1月18日、BUMP OF CHICKENの22枚目のシングル「グッドラック」が発売された。


BUMP OF CHICKEN「グッドラック」

この曲は映画「ALWAYS 三丁目の夕日 '64」の主題歌でもあり、限定盤には30分ほどのショートムービーが収録されたDVDも付いてきた。見返すと染谷将太吉岡秀隆が出演している、なかなかに豪華な内容だった。また、CDの盤面や歌詞カードなどに映画とリンクした東京タワーや、まだ完成前だった東京スカイツリーがデザインされていて、それを見て東京という場所に憧れを抱いたというのが、東京の大学への進学を目指した理由のひとつとなっている気がした。

 

そしてもう一つ、このCDにはバンプにとって2008年以来4年振りとなるアリーナツアー「GOLD GLIDER TOUR 2012」の抽選応募券も付いていた。前回の記事で取り上げた「ゼロ」にもその前に行われたライブハウスツアー「GOOD GLIDER TOUR」の抽選応募券が付いていたのだが、一番近い所でも名古屋でのライブでしかなかった。まだバンドのライブに見に行くために遠征する、という発想が全くなかった自分は「GOOD GLIDER TOUR」で盛り上がっている様子を、「ROCKIN'ON JAPAN」などといった音楽雑誌のレポートを見て羨ましく思うだけに終わっていた。

今回の「GOLD GLIDER TOUR 2012」では、地元・静岡のエコパアリーナでもライブが開催される事が決まっていた。念願のバンプのライブに参加できるチャンス、どうか当たりますようにと念を込めながら自分はイープラスから申し込みを行った。

そして、当落発表当日、自分は震える手を何とか動かしてサイトを開いた。すると、「チケットをご用意いたしました」の文字が。バンプのファンになってから4年目、ついに自分は人生で始めてのライブ、しかも自分が一番好きなバンドのライブに参加する権利を得る事が出来たのだった。

 

高校入学から数か月、自分は中学から続けていた吹奏楽部に所属したり、クラスの委員決めで何故か応援団に所属する事になり、毎日厳しい指導を受けたりするなどの新生活特有の忙しい日々を過ごしていたが、そんな大変さもバンプのライブに行ける事を考えれば微塵も感じなかった。サイトにアップされるグッズの情報を見て、少ない所持金からどれを買うかをずっと悩んだり、過去のセットリストを見て今回のライブではどれを披露してくれるのか、自分がバンプにハマるきっかけとなった「カルマ」は果たして聴けるのか、などといった事を色々と考えていた。

もちろんライブに向けた準備も周到に行っていた。当日は部活の練習も入っていたが、家の用事があるというあからさまなウソを付いて休みを取っていたし、応援団の練習も、その一週間ぐらい前から足を痛めているという、こちらもバレバレなウソを付いて上手い事当日のしごきを回避するなどしていた。ライブにはどのような恰好で行けばいいのか、水分は持ち込めるかなど、本当に遠足に行く前日の子供みたいなムーブを一か月に渡って行っていた。それ程に、初めてのライブへの期待と興奮が止められなかったのだ。

 

そして、来る6月9日土曜日、「ロックの日」だなんて運命を感じるな…なんて思いながら自分は会場に足を運んだ。…親の車で送ってもらって。

恥ずかしい話だが、自宅から会場までは少し距離があり、電車賃を考えるとグッズをいくつか諦めなければいけない事に気付いた自分は、母親にほぼ泣きつきながら送迎をお願いしたのを覚えている。母親は快く承諾してくれたが、残念な事にその時取れたチケットは一枚だけで、ライブの開演中、ずっと母親を駐車場で待たせるという事態が発生してしまった。ライブの終演後、母親と合流した際、「外からの音が聞こえてそれなりに楽しかったよ」とは言ってくれたが、今となっては心から謝りたいくらいに申し訳ない事をしてしまったと反省している。

 

時を少し戻して開演前、自分は待望のグッズの購入に向かう事にした。会場のエコパアリーナはスタジアムが併設されており、そのスタジアムの外縁をぐるっと囲むようにその待機列は形成されていた。こんなに並ぶものなのか…とライブ初体験の自分はかなり面食らいながらも最後尾に着き、自分に順番が回ってくるのを今か今かと待ちわびていた。並び始めてから大体1時間くらいと結構な時間並んでいたが、それも特に退屈だと感じなかったのは、ひとえに同じように並んでいた観客から感じるワクワクを感じ取る事が出来たからであろう。同じバンドを好きな人たちで集まれる機会というものに、自分は喜びと興奮を感じていた。

そうこうしている内にやってきた自分の物販の番。自分はライブTのブルーとオレンジ、FFコラボのピンバッジ付のTシャツ、スティッチコラボのキーホルダー、パスケース、そしてスポーツタオルを2枚購入した。このタオルが人生で初めて「保存用」まで購入したものだった。

今振り返ると、ブルーとオレンジのTシャツはなかなかに攻めたチョイスだった。もちろんホワイトやブラックといった着回しやすいカラーのものもあったが、とにかく派手なやつが良い!というお子ちゃまみたいな発想でその色を購入した自分は、当時ファッションにも疎かったというのもあるが、とにかく至る所でそのTシャツを着倒していた。9年前の自分に言いたいのは、「もっと落ち着いた色の服を選べ」、ただそれだけだ。

 

無事にグッズも購入でき、いよいよ会場の時間が訪れた。自分が取ったチケットはアリーナ席の一番後ろのブロックだった。もちろんステージなんてとても遠くにあり、メンバーも米粒ぐらいにしか見えなかったが、そんな事ですらどうでも良いと思えるくらいに、ライブ会場という空間にいられる事にとにかくテンションが上がっていた。その頃のバンプの開演前のSEはモーリス・ラヴェルの「ボレロ」で、この曲がクライマックスに近付くほどに会場全体の熱量も上がっていた。最後の方ではクラップも発生するくらいの盛り上がりを見せ、フィナーレを迎えた後、遂にその時が来た。

 

始めはムービーからだった。


BUMP OF CHICKEN「天体観測」スペシャルMV

(↑この動画から、少しだけオープニングのムービーを見る事が出来る)

ファンタジーチックなその映像は、この会場をどこか現実とは違う空間へと誘っているように思えた。ムービーの中で主人公がグライダー型の金色の模型を手に入れ、それを投げた瞬間に視点がその模型へと移り変わり、様々な土地を滑空している様子が映し出されていった。そしてその模型が最後にこの会場へと辿り着き、煌めきを残して消えていくという演出に観客も拍手で応えていた。

すると突然、軽快なドラムのリズムが鳴り響いた。暗幕越しに、升秀夫がドラムを叩く様子が照明を使って大きく映し出される。そこからベースの直井由文、ギターの増川弘明とメンバーが続々とステージ上に現れ、ついにボーカル&ギターの藤原基央も登場し、ライブではお決まりのルーティンとなっている、ギターを片手で掲げる動作を行った時に観客のテンションはMAXとなり、会場全体を包み込むような歓声と拍手の波が起こった。そうして披露された1曲目が「三ツ星カルテット」だった。

オリジナルはアコースティックギターでの演奏だが、このライブではエレキギターを用いたロックテイストのアレンジで披露された。淡々とした歌唱部分と、荒々しさが全面に押し出されたアンサンブルのギャップもさることながら、めまぐるしく変わる照明にも、その全てに自分は心を鷲掴みにされた。これがライブというものなのか…、そんな感想を抱きながら、すぐさま次の曲、「宇宙飛行士への手紙」が始まった。

このライブ用に長めにアレンジされたスペーシーなサウンドのイントロから始まり、第2イントロに入ると同時に強い衝撃音と共に幕が上がった。ステージの方で銀テープが大きく舞い上がっているのが見える。アリーナの一番後ろにいた自分には到底その銀テが届くはずもないのだが、それでも前のアリーナの観客たちに劣らないくらいの興奮が沸き上がった。スクリーンにメンバーの姿がようやく映し出されたのだが、当時のベースの直井はロン毛で髪を細いバンドでまとめるという、ヒッピーに近い形のヘアスタイルをしていた。正直、変な髪形なんて思いながら、その時にしか鳴らせない音が次々に紡がれていく。

 

途中でMCが挟まれながら、「分別奮闘記」や「ゼロ」、「Stage of the ground」「友達の唄」と、「COSMONAUT」の曲を中心に最新曲やライブでの定番曲が次々に披露されていく。夢にまで見たバンプのライブは、まるで本当に夢の中にいるのではないかと思ってしまうくらいに、4人から奏でられる曲の数々に、ただただ心を奪われていた。

 

その後、「Smile」「友達の唄」を経て、「ハルジオン」が演奏された。これはライブあるあるだと思うのだが、それまで自分の中ではいまいちパッとしなかった曲が、ライブで聴いた際に一気に名曲だと気付く事がある。そして、このライブでは「ハルジオン」がまさしくそれに当てはまる曲だった。音源でもそのロック然とした格好良さは感じていたが、生で聴くとその鋭さが一段と際立って感じられた。ライブだからこその重低音が強いサウンドもあってか、ドラムの一音一音が自分の体を強く振動させた。

 

「ハルジオン」の後、メンバーはメインステージを離れ、「四方から見られて恥ずかしいから」という理由で「恥ずかし島」と名付けられたサブステージへと移動した。先ほどまで米粒ぐらいの大きさでしか見る事の出来なかったメンバーがより近くに来る。その事にテンションが上がった自分は柄にもなくメンバーの名前を呼んだりしていた。そして「恥ずかし島」での演奏が始まった。「車輪の唄」では観客の皆が思い思いに体を揺らし、「sailing day」では皆揃って腕を上へと掲げていた。一つの音楽を中心として、観客全員の心が一つとなる。そんなライブというものの素晴らしさをこの2曲を通して感じていた。

 

「恥ずかし島」での演奏を終え、メンバーはメインステージへと戻っていく。その途中でいきなり流れ始めた音楽。自分はすぐに「星の鳥」のあのメロディーだと気付く。そしてメインステージのスクリーンに映し出される、宇宙空間をバックの赤いデジタル表記の現在時刻。今この時間だけのライブであるという事を示す演出に観客全体が改めて息を呑み、メンバーの再登場を心待ちにしている。そして再びステージに現れた彼らが披露したのは「メーデー」。そう、「orbital period」の流れそのままの披露だった。会場のボルテージはこの曲で再び最高潮となり、自分がいた一番後ろのアリーナブロックでもサビでジャンプが起きていた。間奏のドラムソロやラスサビでの盛り上がりもそのままに、ライブは終盤へと差し掛かっていく。

 

「イノセント」「supernova」「beautiful glider」と、バンプの曲の中でも特にシリアスな曲が続く。バンプのライブでは恒例の「supernova」での合唱も、自分にとっては初体験の事だった。「ラララ」だけの極めてシンプルなメロディーが、この会場にいる全員によって奏でられる。その時のエコパアリーナは、きっとその日で一番大きな優しさに包まれていたといっても過言でないくらい、素晴らしい空間と化していた。

 

「beautiful glider」が終わり、バンプは再びギターを鳴らし始める。今まで聞いた事ない4人のアンサンブルはとても重く暗いものだったが、何故か引き付けるものがあり、次の曲を今か今かと待ちわびる自分たちの心を焚きつけるようだった。そして、自分が2009年のあの日からずっと聞き続けたあのイントロが掻き鳴らされる。「カルマ」が、ついに来た。

一番好きな曲にテンションのゲージが振り切れてしまった自分はその日一番の大声を上げてその曲を迎え入れた。そして3分半という一瞬を、とにかく全力で味わおうとした。今となっては周りのお客さんに全力で謝りたいのだが、興奮のあまり、サビを熱唱してしまったりもした。大迷惑でしかない行動も取ってしまうくらいに、その日一番の熱狂に一人包まれていた。

そして最後の曲、「天体観測」の時間がやってきた。誰もが知っているバンプのアンセムに高まった観客が皆一様に掛け声を上げ、腕を振り回していた。そして、サビ終わりのあの「オーイエ―アハーン」も全員で歌い、本編は幕を閉じた。

 

興奮冷めやらぬ観客は、アンコールの催促として「supernova」のサビを歌い始める。初めてのバンプのライブだった自分は、こういうものなのかと思いながら、その合唱の輪に加わった。広い会場ゆえに所々で合唱にズレが生じていくのだが、それもまたひとつの要素として見事に機能していた。観客がひたすら手を左右に振りながら合唱を続けていると、ステージが明るくなり、メンバーが再び自分たちの前に現れた。アンコールの時間だ。

 

ステージに現れたメンバーはすぐさま「K」を演奏し始めた。バンプの中でも屈指の人気を誇るこの曲のサプライズ的な披露に会場も思わずどよめいていた。「K」の演奏が終わり、グッズ紹介やメンバーの感想などといったMCを経て最後の一曲として「ガラスのブルース」が披露された。バンプの始まりの曲、自分は震災の際にラジオで披露された弾き語りの事も思い出しながら、もうすぐ終わってしまうこの瞬間に思いを馳せていた。そして間奏に入ると同時に藤原基央の口から発せられる「ギター、増川弘明!」の一言。ラスサビ前の大合唱を含め、このライブがかけがえのないものへとなっていくのが、自分の中でも感じられた。

ガラスのブルース」の演奏が終わり、楽器を置くメンバーたち、観客もこの時間が終わってほしくないのか、それぞれがメンバーへと歓声を送っている。すると、「もう一曲やっていい?」という藤原基央の声が。観客は再び熱気を起こして、その提案を受け入れた。そして披露されたのが、あの「DANNY」だった。

 

バンプの隠しトラックの中でも特に人気を誇る楽曲であり、ライブでも千秋楽や、ごくごく稀にしか演奏されないこの曲。自分は、存在こそは認知していたものの、聞いた事はなかったため、けたたましいサウンドと、バンプ唯一の全編英語の歌詞に、とにかく流れのまま付いていくしかなかったのを覚えている。自分が生で聴けた「DANNY」はこのライブのみで、以降のバンプのライブに参加する時も、「DANNY」をもう一度聴く事が出来ないかという期待を抱いてしまっている。自分にとっての初めてのバンプのライブは、それまでの興奮と喜びを噛みしめつつ、「DANNY」に呆気にとられたままの自分を残したまま、こうして終わっていった。

 

終演後、ぞろぞろとそれぞれの家路に着く観客たち。自分はライブの興奮そのままに、当時まだ手に入れていなかった「天体観測」のCDを物販で購入し、母親の車で送られながら、「天体観測」と「バイバイサンキュー」の2曲を、ひたすらリピートしていた。

 

ここまで長々と初のバンプのライブのレポートを書き連ねてきたが、やはり「最初」という付加価値もあってか、このライブに関しては今でもハッキリと思い出せる場面が多々あり、それこそ、それら全ての思い出が金色に輝いているように感じられる。

後にこのツアーの代々木第一体育館での様子を収めた映像作品も発売され、自分はすぐさま手に入れ、何度も見返していた。特に、「ガラスのブルース」に関しては、この映像作品でしか体験する事の出来ない、貴重なテイクが収録されているので、興味のある人には是非とも見てほしい。

 

こうして人生初のバンプのライブを経験した自分は、夏の「firefly」の発売などを経て、2013年へと突入していくのであった。

 

〈つづく〉