自分とBUMP OF CHICKEN その12 悲喜交交編

※このブログは、自分と、自分がこの世で一番好きなバンドであるBUMP OF CHICKENとの思い出を振り返る、言わば自分語り回顧録です。

 

2020年、世界では新型コロナウイルスが大流行し、日本でも3月に緊急事態宣言が発令され、私たちの生活は大きく変わる事となった。BUMP OF CHICKENもこのコロナ禍に巻き込まれる事となり、メンバーがパーソナリティーを務めるラジオ番組「PONTSUKA」も放送を休止し、バンプの楽曲を流すだけの放送へと切り替わったり、コロナ禍の影響で大きなタイアップが流れたしまったという噂も聞くほどに、活動が上手く行えない状況が続いていた。

しかし、そんな状況の中でも、バンプはその時に出来る事を自分たちに届けてくれた。5月には当時の最新の映像作品だった「PATHFIDER」のSSA公演の本編や、それまで公開していなかった既存楽曲のMVをYouTubeで無料公開したり、「Hulu」にて「BFLY」の日産スタジアム公演の本編を無料配信したりと、ライブが出来ない状況でも我々リスナーが楽しめる機会を提供してくれた。

自分は当時就職活動をコロナ禍の中で行っていた。ただでさえ慣れない状況に加え、感染対策も徹底しなければいけないという、今思い返しても大変な日々を送っていた。それでも、バンプの曲を聴き、MVやライブ映像を見る事で、何とか明日の面接も頑張ろうと思う事が出来た。

 

8月、新型コロナウイルスの流行は依然として続いていたが、エンタメ業界も少しずつ活動を再開し始め、バンプに関しても、待望の新曲「Gravity」がアニメ映画「思い、思われ、ふり、ふられ」の主題歌に決定したり、「PONTSUKA」もいよいよ通常放送を再開したりと、バンプが動き始めた事に嬉しさを感じ、佳境と差し掛かった就職活動も、映画や毎週の「PONTSUKA」を楽しみにする事で何とか乗り越える事が出来たのだった。

 

そんな中、8月23日深夜放送回の「PONTSUKA」において、ボーカル&ギターの藤原基央が結婚を発表した。自分はその日もいつもの様に番組をリアタイしていて、メンバーがメール読みやコーナーを進行しているのをのんびりと聞いていた。すると唐突に藤原が「大事なお知らせがある」という一言を放った。何だなんだと思った次の瞬間に藤原から発せられた言葉が「俺、結婚しました」だった。

一番最初に頭によぎったのは「本当か…!?ドッキリなんじゃ…?」だった。あの藤原が結婚したという事実を、すぐには受け入れる事が出来ずにいたのだった。衝撃の一言の後、藤原はお相手が一般の方という事や、こうして言葉で結婚を報告できた事への喜びなどを語っていた。結婚しても自分たちの音楽は変わらない事、何よりもこれまで応援してくれたリスナーには感謝しかないという藤原の言葉からは、リスナーに対する愛が十分すぎるほど伝わってきた。自分もこの発表にいたく感激し、思わず公式Twitterでの再度のご報告に、お祝いのリプライを送ってしまった。

BUMP OF CHICKENは、それこそ「PONTSUKA」で子どもの頃の思い出や、今ハマっているものなどを話す事はあったが、結婚といったプライベートな内容には一切と言っていいほど触れてこなかった。そんなバンプが今回このような発表をしてくれた事に、これまでのライブなどとはまた違った形でメンバーとリスナーの間の絆のようなものが垣間見えた気がした。

 

そして数週間後、「Gravity」の配信が開始され、「aurora ark」の映像作品の発売決定や、映画の公開も間近に迫った事でリスナー界隈も盛り上がりを見せていた頃、ベース・直井由文に関する報道が週刊誌に掲載される事となった。

この一連の報道に関しても、最初に思った事は「本当なのか…!?」だった。こういったスキャンダルとは一切無縁の世界を生きていたように思ってたバンプから、こういった話が出てきたという事実を、素直に受け入れるのは自分にとって、とても難しい事だった。この報道を流し見でしか読む事が出来なかったが、読んでもやはり心のどこかで「そんな事をする人ではないはずだ」と願ってしまってもいた。

報道が世に出てから数時間後、バンプの公式SNSと、直井個人のSNSから、今回の報道を受けての声明と謝罪文が投稿された。報道をすぐに信じられなかった自分は、これをもってようやくこの件は事実なんだという事を痛感した。

 

有り体に言ってしまえば、この報道はとてもショックだった。幾度となく自分の人生に深く入り込んで、時には助けてくれた音楽たちを奏でている人たちの中から。あれだけ音楽に対して献身的で、リスナーの事を大切に思ってくれていたメンバーから、誰かの心を深く傷付ける人が現れたという事実は、簡単に受け止められるものではなかった。

かといって、メンバーやバンプの楽曲たちを嫌いになったかというと、そんな気持ちは全くとは言えないが、ほとんど起こらなかった。言ってしまえば、バンプは自分と自分の人生に深く染み込んでいて、それがない状態が考えられないくらいの存在となっている。自分には、そんなかけがえのない存在を頭ごなしに否定する事は、とても出来なかった。

 

この件で深い傷を負った方がいるという事実にも心が苦しんだし、何よりも他のメンバーや、関係者の方々の心中を察する程に居たたまれない気持ちになった。報道直後の「PONTSUKA」は放送を見合わせ、その時間はバンプと全く関係のない曲が流れていた。かつてコロナ禍の影響で放送を休止していた時にもバンプの曲は流れていたのに、この一件でそれすらも出来なくなってしまったという事にも、強い悲しみを覚えた。

 

報道から一週間後、「Vo./Gt. 藤原基央、Gt. 増川弘明、dr.升秀夫より皆様へ」というタイトルで、公式HPに今回のいきさつと、今後の活動についての声明が掲載された。

リスナーを失望させてしまった事に対するお詫びと、直井が活動休止する事、そして、今後の活動は残りの3人で、「今我々に出来る活動の全てを全力で続けていく事」を表明していた。

そして数日後の「PONTSUKA」でも、藤原がメンバーを代表して今回の件について説明し、今後の活動などについて説明を行った。

このふたつのどちらにも、メンバーの、今回の件に関する責任の重さと、それでもリスナーに対してしっかりと向き合っていこうとする真摯さが苦しくなる位に伝わってきた。どれだけ自分たちが傷ついたとしても、リスナーや世間としっかりと向き合う事を宣言してくれた事に、心からの感謝を伝えたくて仕方がなかった。

 

自分としては、一人が活動休止という状態になったが、ひとまずは活動を続けてくれた事にとても安堵したのを覚えている。これが仮にバンプ全体の活動を休止、もしくは終了する事になったとしても、その事を受け入れるぐらいの気持ちでこれらの声明を待っていた。メンバーがリスナーに対してこれだけ真摯に向き合ってくれるのであれば、こちら側も、バンプの音楽に対してより真摯に向き合うべきではと、たかがいちリスナーに過ぎない存在だが、この時そう思うようになった。

 

この報道の後、「PONTSUKA」は3人で通常通りの放送を再開し、バンプとしても9月にポケモンとのスペシャルコラボMV「GOTCHA!」に新曲「アカシア」を提供し、大きな話題になるなど、形は変われどこれまでと同じような活動を行うようになった。

どんな事が起きても、バンプから生まれる音楽は、やはり素敵で、かけがえのない感情を自分に届けてくれる。2020年は、そんなバンプという存在の大切さを改めて嚙みしめる1年だったように思える。

そして翌年の2021年、バンプは結成25周年の日を迎える事となった。

 

〈つづく〉