自分とBUMP OF CHICKEN その13 25年目の「ガラスのブルース」編

※このブログは、自分と、自分がこの世で一番好きなバンドであるBUMP OF CHICKENとの思い出を振り返る、言わば自分語り回顧録です。

 

2021年2月11日。BUMP OF CHICKENの結成25周年の記念日を迎えるこの日に、新曲「Flare」が配信リリースされた。


BUMP OF CHICKEN「Flare」

ベースの直井が活動を休止してから初めて製作されたこの曲。ベースの部分はボーカルの藤原が代わりに演奏している。上記のMVも、直井を抜いた3人でのパフォーマンスを映像に収められている。

3人で活動していくという声明は、この結成記念日を迎える前から聴いていたものだったし、その間にも「Gravity」や「アカシア」といったリリースもあった。しかし、それらは直井もレコーディングに参加していたものであって、まだ4人での活動の跡が残るものであった。

こうしていざ3人で演奏する様子を目にした時は、やはりどこか寂しさを感じる所があった。メンバーがそこに「いない」という事実を、改めて突き付けられたような気がした。

それでも、「BUMP OF CHICKENの音楽」というものは、これまでと変わらない形で、そこで鳴り響いていた。たとえ3人での演奏でも、4人分の重みが乗っかっている、いつものように鳴り響く音楽が、そこにあった。

 

「Flare」のリリースから数週間後の2月27日、バンプNHKの音楽番組「SONGS」に約5年振りに出演した。

ここでもメンバーは3人で「アカシア」「Aurora」「Flare」を演奏し、最後の「魔法の料理 ~君から君へ~」では、オリジナルの音源にも参加していた、ストリングスの演奏家たちを招いた特別バージョンを披露していた。

これまで何度も聞いてきたバンプの演奏に、耳からは感動や興奮が伝わってくるが、目からは、どうしても一人いないという情報から寂しさを感じて、それが混ざって不思議な感覚になっていた。それでも、バンプの曲たちはいつもと変わらない大切さを纏って自分まで届けられていた。

番組中のインタビューで、藤原が「大切なものを、大切にしたくて」と発言していた。リスナーが勝手に大切に思っていたバンドメンバーの関係性を、こういった状況の中で、改めてメンバーたち自身が大事にしてくれている事に、嬉しさと同時に申し訳なさを感じた。

 

直井がいつ戻ってくるのか、4人でまたライブが行われるのかは、未だ分からない。それでも、メンバーが大切にしたいと思っているものを、なるべく、所詮曲を聴いているだけに過ぎない自分も、メンバーと同じくらいの熱量で、大切に出来たらと、「SONGS」を見ていて思った。

 

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最初に「Flare」を聞いた時に思ったのが、最初と最後に流れるギターのメロディーが、どこかブルースのように聞こえる、だった。それと同時に思い起こされたのが、BUMP OF CHICKENの始まりの曲、「ガラスのブルース」だった。

ブルースとは、元々はアメリカに強制移住させられたアフリカ系の人々が、孤独感や悲しみといった感情を込めて歌ったものを指す言葉であり、黒人霊歌やワークソング(労働歌)といったものから発展し、成立したジャンルだ。

「Flare」を聞いた方なら分かると思うが、この曲の歌詞には、人間としての生活を送る上でのつらさややるせなさ、その他悲しみや苦しみといった感情が込められているように思う。また、かつて「ギルド」で歌われた〈人間という仕事〉に追われ、心が擦り切れている様子が見える所からも、一種のワークソングともとれると思う。この「Flare」が歌おうとしているのは、まさしくブルースなのだと、この曲を繰り返し聞く中で思った。

「Flare」の中で描かれる人物は、眠れない程に耐えなければいけないものを抱えていたり、心は壊れていると断言したりと、とても正常とは言えない状態に追い込まれている。歌詞はこのように人間の暗い側面を描いているが、それに対してサウンドは心に迫る、優しいものとなっている。聴く人に厳しい現実を突きつけながらも、そんな現実の中で必死にもがこうとする人たちを優しく包み込んでくれる。

 

個人的に、「Flare」の中で何度も繰り返される〈灯火〉というワードには、青い炎のイメージを抱いている。青い炎は、赤い炎と比べると勢いは小さく、弱弱しく燃えているように思える。しかしその実、青い炎は赤い炎よりも高温で、安定した状態で燃焼を続けているのだ。青い炎は、〈どれほど 弱くても〉、自分という存在のために、ずっと〈 燃え続け〉てくれている〈小さな灯火〉なのだ。そして、バンプはその〈灯火〉を決してないものにしない。燃え続けている灯火がその先も燃え続ける事に対して、〈大丈夫〉という一言で、肯定してくれる。

 

25年目の節目にリリースされた「Flare」は、結成から変わらない「ブルース」を、自分たちの所まで届けてくれた。人生とはどこまでも大変で、時には生き死にを考えてしまう位に厳しいものだと思う。それでも、その事実を受け止めつつ、なおも前に進むためのエネルギーを与えるために、「Flare」を始めとするバンプの曲は存在しているのだと思う。

自分の人生が続く限り、BUMP OF CHICKENの奏でる「ブルース」を聴き続けたい。

 

〈つづく〉