自分とBUMP OF CHICKEN その11 「arc」と「ark」編

※このブログは、自分と、自分がこの世で一番好きなバンドであるBUMP OF CHICKENとの思い出を振り返る、言わば自分語り回顧録です。

 

2019年3月、BUMP OF CHICKENの約3年半振りとなるアルバム「aurora arc」の発売と、7月からのドームツアー&ライブハウスツアー「aurora ark」の開催が発表された。「Butterflies」以降のバンプは、とにかく出す曲出す曲がタイアップ付きだったというのもあり、その辺りのアルバム収録との兼ね合いや、新曲にはどういったテイストの楽曲が来るのか、などといったアルバムに対する期待に溢れていた。それと同時に、「BFLY」以来のドームツアーという事で、出来るだけ多くライブに参加したいという気持ちがあった。

というのも、当時の自分は大学3年生で、翌年には就職活動、その翌年には社会人生活が控えているというのもあり、バンプのライブに何度も参加できるのはこのツアーが最後かもしれないという気持ちがあった。大学生活にもある程度余裕が出来、ライブにかかる諸経費もアルバイトで準備していた事もあって、このツアーには4公演と、今まで一番会場に足を運ぶ事が叶った。

まさかコロナウイルスの流行で、上で並べたものとはまた違った理由でライブに参加できる事が出来なくなるとは、このライブを巡っていた時点では露程も思っていなかった。結果としてこれだけのライブに参加出来た事が、どれほど恵まれていた事だったかを痛感している。

それぞれの会場でのライブについての感想は、後ほど書き連ねていきたいと思う。

 

2019年のバンプは、アルバム「aurora arc」と「aurora ark」の二つが大きな活動の軸となったが、もう一つ大きな動きとなったのが、6月の各サブスクリプションサービスでの音源の配信解禁だ。バンプはこういったストリーミング系の配信とは無縁の存在だと心の中で思っていたので、この解禁にはとても驚いたのを覚えている(もっとも、2016年の時点で「Google Play Music」にて一部音源を期間限定で配信していたが)。「BUMP OF CHICKEN」という存在が、より多くの人に知られる機会が生まれた事に喜ばないはずがない。自分も、バンプのサブスク解禁をきっかけにSpotifyの利用をちゃっかり始めた。あまり定額制のサービスを利用する気が起きない自分にとっては、こういったきっかけを与えてもらえて感謝しかない。今ではサブスク配信がない生活が考えられないほどに染まってしまっている。

余談だが、各種サブスクにはいわゆる「隠しトラック」は含まれていないのも、既存のCD時代からファンだった人たちとの上手い兼ね合いが取っていると思う。サブスクからバンプを聴き始めた人がCDを手に取り、「隠しトラック」の存在を知った際にどんな反応を示すのか、非常に気になる。

 

7月10日、待望のニューアルバム、「aurora arc」が発売された。先述の通りこのアルバムにはタイアップ曲が全14曲中11曲と(発売後さらに1曲増え、計12曲となった)、その多さにベストアルバムのような内容になるのではないかと視聴前は思っていた。しかし、実際にアルバムを通して聞いてみると、1曲1曲が互いに反発する事なく、まさに「aurora arc」という弧を描こうと、それぞれが一つにまとまって軌跡を形作ろうとしているのが強く感じられた。

特に、「流れ星の正体」の初めて聴いた時の衝撃はすさまじいものだった。元々この曲が、2017年に藤原基央の音楽雑誌での連載の終了をきっかけに作成されたデモ音源が公開されてから、実に2年半以上の時を経てフルバージョンの公開という、壮大なドキュメント性を備えていたというのもあったが、特に最後の歌詞が、バンプという存在と、バンプの楽曲たちが目指しているものを赤裸々に、力強く伝えてくれるものだった。往年のバンプファンにとっては感涙ものの楽曲だが、バンプを詳しく知らないという人にもぜひ聞いてほしい一曲だ。


BUMP OF CHICKEN「流れ星の正体」

 

アルバム発売後から数日後の7月12日、いよいよ「aurora ark」が埼玉・メットライフドームにて、4か月に渡る航海を始めた。自分にとってメットライフドームに足を踏み入れるのは、2015年のアイドルマスターの10thライブ以来4年振りと、様々な懐かしさも感じながらアリーナ席の前方の方で開演を待っていた。

ライブの内容は、「aurora arc」の収録曲を軸としながらも、どこか「BFLY」の要素を、一方では「PATHFINDER」の要素を感じさせるという、「最新バージョンのバンプ」というものを強く体感させるものだった。まだ明るい時間から始まり、客席と天蓋の間から日の照る外の様子も見る事が出来たこのライブは、朝から降っていた雨なんて関係ないくらいの夏の熱気、そして観客から起きる熱気が混ざり合った、出航にふさわしい盛り上がりとなった。また、今回のツアーで唯一「月虹」が聴けたライブでもあった。これまでのバンプのライブにはなかった火の演出があったりと、とてつもない熱狂に包まれたのが懐かしい。

f:id:huku_yobi01:20210310220144j:plain

 

続いて自分が乗船したのが8月21日の新木場STUDIO COAST公演の2日目だった。まさか当たるとは思っていなかったライブハウス公演のチケット。何度もバンプのライブに参加してきたが、こんな貴重な機会はこの日しかないと思い、いつも以上に入念な準備をして参加したのを覚えている。

ライブハウスで聴くバンプの音楽は、とにかく距離が近かった。ドームやアリーナとは物理的な遠さがあるから、それと比べれば音だって近くに聞こえてくるのも当然分かっている。それでも、こんなにバンプのメンバーが奏でる音が直接自分に向かって届くという初めての体験に、自分はただただそれらを受け取るだけで精一杯の状態になっていた。自分は一階のスタンディング席と2階の座席もあるスペースの境目の階段辺りでこのライブを見ていたが、メンバーの登場や、一曲一曲が披露され始める度にうねるように動く1階席の様子にもとても新鮮さを感じていた。ドームのような巨大なスクリーンやライティングを使った派手な演出はないが、それでもバンプの曲が持つ力をシンプルなステージング故に存分に感じられるライブだった。

f:id:huku_yobi01:20210310221434j:plain

f:id:huku_yobi01:20210310221539j:plain

 

自分の「aurora ark」も後半戦、次に参加したのが9月22日の愛知・ナゴヤドーム公演だった。以前の記事でも書いた、自分が再びバンプにハマるきっかけの一つとなった「BFLY」ツアーの公演以来3年となったナゴドでのライブ。元々最初にツアーが発表された際のラインナップでの最終公演だったというのもあり、「DANNY」聞きたさに応募したライブであって、のちにファイナルとして東京ドーム公演が発表された時には「行かなくてもいいかな…」なんて若干思っていたりもしたが、結果として、このライブに参加できた事がこの上ない幸せな出来事となった。

思い返せば、この日のライブは最初から空気感がそれまでとは違うものだった気がする。「Aurora」の、それまでにない歌詞変えや、「話がしたいよ」の〈君の好きな匂い〉という歌詞変えから感じる、より具体的な対象に向けたような内容に、どこか不思議な感覚を覚えた。そしてアンコール、このツアーでは初めての披露となった「同じドアをくぐれたら」の披露に観客も盛り上がり、「ガラスのブルース」で綺麗にエンディングを迎えたと思った所に、まさかの藤原からの「もう一曲やっていい?」という問いかけが。「先歌うから(他のメンバーは)入ってきて」という一言から始まったのが「バイバイサンキュー」。藤原以外のメンバーが大慌てでステージに戻ってきて、藤原の弾き語りに一人一人と加わっていく様子に、観客も興奮を抑えられずにはいられなかった。自分にとっては、初めてのライブの帰りに「天体観測」と交互に聞いたこの「バイバイサンキュー」への思い出を振り返りながら、3拍子に揺られながら、ただただこのWアンコールを噛みしめていた。

f:id:huku_yobi01:20210310223533j:plain

 

そしてこの「aurora ark」も、11月4日、東京ドーム公演において終わりを迎える事となった。このライブも、上手く言葉に表せない位の、特別な時間だった。

「新世界」、〈ベイビーアイラブユーだぜ〉という、バンプの歌詞にしてはあまりにもポップ過ぎて、それでいてたくさんの愛が込められたこの歌詞が、曲が終わってからも、藤原と観客とでコール&レスポンスされ、藤原以外のメンバーもそれに沿うように伴奏する時間が偶発的に生まれた。まるでこの時間を、一秒でも長く続けたいという藤原とメンバーの想いが込められているようで、とても感慨深く思ったのを覚えている。

そしてアンコール。名古屋でも聴けた「バイバイサンキュー」と「ガラスのブルース」で一応のアンコールを迎えたが、ナゴドでのあの時間を味わった自分としては、これで終わりなはずがないと謎の期待を抱えていた。そして案の定、ナゴドを思い出すかのように、藤原が「スノースマイル」を歌い始め、メンバーもそれに続くように演奏を始めた。夏の暑い時期から冬へと差し掛かろうとする期間に行われたこの「aurora ark」というツアーの時間の経過が、この「スノースマイル」に込められていたように思う。

スノースマイル」の終了後、さらにもう一曲歌い始める藤原。このツアーの一番最後に披露された「花の名」は、ギターの増川が途中まで演奏に入りそびれたりと、パフォーマンスとしては少々イマイチな所もあったかもしれない。それでも、「新世界」のコール&レスポンスと同じように、音楽を中心に、メンバーと観客がひとつになったこの瞬間を、少しでも長く続けたいという想いには、そんな些末な事は気にする必要なんて全くなかった。演奏が終わりメンバー4人の熱い抱擁を経た後、「aurora ark」は幕を閉じたのだった。

f:id:huku_yobi01:20210310225235j:plain

 

自分にとって「aurora ark」は、一言で言えば「魔法の時間」だったと思う。あの興奮も、あの感動も、あの一瞬一瞬の間にだけ感じられたものだった。それでも、その残滓が、今でもこうしてこのツアーを振り返る度に、あの日感じたものを蘇らせてくれる気がする。

個人的に、「aurora arc」は「旅」がひとつのテーマであると思っている。メンバーがスタッフとオーロラを撮影するために実際にカナダのイエローナイフまで赴いたというアルバム製作の過程も含めて、人生という名の旅を、バンプの曲と共に歩んできたリスナーにとって、まさにアルバムという形で「aurora arc」が残されたように思う。そして、そんなアルバムを引っ提げて行われた「aurora ark」も、同じように各地のドームやライブハウスを巡るという過程を経て、一つの旅として形作られたのだと、このツアーを振り返って感じた。

素敵な旅を経験させてくれて、ありがとうと、心の底から伝えたい。

 

〈つづく〉